今回はシングルトップクラスのバイク SRX600をカスタムします
すでにどこかのショップでカスタムされていたらしく、結構ノーマルっぽくありません

タンクはサベージ、シートはノーマル、その間を黄色いプレートで埋めています
全然かっこよくないんです
造りはいいのですが・・
どう染めるか助手と思案します

 

独特のフレームは安易なカスタムを拒絶するかのごとく、ほとんどの案が流れては消えます

ライトのフルカスタムはまずキーワードを決めます
まーどこの改造屋さんもそーなんでしょーがね

そのキーワードに沿って全体のスタイル 細部のパーツ選択をしていきます
今回のキーワードは 「死ぬほどクライマー」 になりました
600cc単気筒でめっちゃクライマーなんて、作っていてワクワクしてきます
とりあえずタンクはこれで決まりました

スポーツスタータンクを付けるのには半日かかりました
タンクを大げさではなく2万発ほどたたいて、フレーム自体も切断、溶接、凹ませなどあらゆる手を使ってしっくり来させます

次にスイングアームを20センチほど伸ばしました
クライマーなイメージがぐっと強くなりました

このスリム&ロングなスタイルがかなりいい感じです
ここからが補強だの磨きだの手間な作業になります

スイングアームを伸ばしたことによってブレーキのトルクロッドも伸ばす必要が出てきました
と言うか20センチロングのトルクロッドを作り直しました オールステンレスで強度も見た目もかなりグーです

次はシートのベースとリアフェンダーです
シートは倉庫にあったなんかの物です 多分セローだと思います
余分なフレームも切ってしまって、すっきりしました

ついで、モノサスに変更しました
1行で終ってしまう内容ですが、実際の作業はとっても大変です
スイングアームにサブアームを溶接し、そことフレームの強度のある部分をサスでつなぎます
これによりクライマー度が上がり、すっきり感も出てきました

ほとんどのスタイルが決まりました
かなりハードでディープなスタイルの出来上がりです
これでロードをぶっ飛ばすの最高です 絶対に

ここで問題発生です
燃料コックがフレームにあたります
本当に初めから終わりまでうっとおしいフレームです
ただ、コックの受けごと焙って叩いて向きを変えてやりました
この程度の問題はフルカスタムには付き物です

レース感を出すためにハンドル周りをすっきりさせます
そのためにスイッチ類を移設させます
移設先のスイッチ系統です
操作性は多少落ちますが、それ以上のスタイルアップを得れます

ショートリアフェンダーに余計なものを乗せたくなかったので、サイドテールキットを作りました
これまたアメリカンっぽいかもしれませんが、妙にマッチしています
いろんなジャンルを織り交ぜるのが、僕は好きです
そのすべてがまとまりを見せ、機能的に動作する瞬間が一番のカスタム冥利に尽きます

そろそろ補強の段階に入ります
コックが邪魔だったので、カットしたフレームに補強を入れます
板の厚さから、元の状態よりもかなりの強度アップになっています

トップブリッジの要らないメーターステー部をカットします
この辺のすっきり具合は、本当に気持ちがいいです
乗って一番目に付くところに、不要なベロが出ているのは、かっこ悪すぎます
よね

助手がばらばらにしています
入社3ヶ月でようやくばらすのに時間をかけるようになりました
そうすることによって、組み上げるときの時間が短縮され、結果早く完成します

奴は確実にパワーアップしています

写真で見るよりやつれたエンジンです
特にエンジンをかけたときの音は悪くは無かったのですが、外見が悪いのでついでにレストアします

例のごとく、バルブを磨き倒します
この後、ヘッドに刷り合わせをし、プチッとくみ上げます

大体エンジンが完成しました
クランクサイドカバーはバフにしました
ばらしていて発見したのですが、カムシャフトにカタカナで”ヨシムラ”と刻印していました
ラッキーでした
偏磨耗もなくまだまだ使える状態でした

前オーナー
あの不細工な外装にFCRやハイカム

ライダーの数だけ好みがありますよ

ショックのレストアも終りました
ボディーはフェラーリレッドにペイントし、スプリングはクロームメッキにしました
その輝きに助手の目もくらむほどです

リアホイールが組みあがりました
ヒルクライマーをイメージしていますので、出来る範囲の一番大きなドリブンスプロケットを選択しました
タイヤは公道を考えたダンロップのD603です
ボルト類はすべてステンレスです

その他のアルミパーツをブラストしました

ブラストすることにより表面が汚れることはあっても、剥げることはありません
だから僕はブラストが好きです
後々のメンテナンス性が大事です

ついに黄色に塗られたフレームにエンジンを載せます
オイルタンクも磨きでぴかぴかです
地味なエンジンに派手なフレームが妙な感じですが
僕の頭の完成イメージにぴったりです

前足もつけました
トップ、アンダーステムはブラック塗装
フォークはフレームに合わせた黄色になりました
グリスアップにより動きもばらす前よりスムーズです

前ホイールをつけるためにフロントを上げています
つい最近新設したチェーンブロックですが、とっても便利です
ぐらぐらのジャッキ作業ではせっかくのカスタム車も心もとないです

バイクリフト?
狭い当店にはスペース的に考えられません

ということで、スイングアーム、ショックリアホイールも組みあがりました
今回のカラーリングは、加工で最もうっとおしかったフレームを逆に一番目立たせました
加工の苦労をみせびらかしたいのです
SRでもCBSSでもないSRXがベースだということを、みせびらかしたいのです

後ろのスプロケを大きくした分、前も合わせて歯数を増やします
ギア比を合わすためです

ほとんど完成っぽくなってきました
が、ここで問題発生です
チェーンとリアブレーキホースが無い!!
忘れてた!!
こんな時にいつも助けてくれるのが上村モータース御中です
おかげ様ですぐに手配できました

タンクを載せました
ベーツライトは今だけのとりあえずです
車検が終れば外してしまいます
アクセルホルダーは何用か分かりません
倉庫に転がっていました

遂に完成です
車検を通して、堂々とロードを走れるヒルクライマーです
いつもの南港で撮影しましたが、600ccでキャブはFCR、ヨシムラのハイカム、スーパートラップはかなり気持ちいいです
それに加えこのスタイルだと目立ちすぎるほど目立ちます
今回のテーマだった”死ぬほどクライマー”はもうどうでもよくなり、ロードをかっ飛ばすのが、とっても楽しいのです

ビンテージなスタイルも好きですが、最近この手が好きになりました
”速くてかっこいい”言うのは簡単ですが、実現は難しいです
今回は僕の中ではかなりの出来だと思います

この長さがたまりません
乗ってしまえば、どうも感じないのですが、降りて眺めている時ににやけてしまいます
実用面での弊害はあまり無いように思います

黄色と銀のバランスと、黒のぼかし具合、赤のアクセントの割合
なかなかの出来だと思います

加工に苦労したスイングアームと、トルクロッドです
車体面では一番の味付けを左右する箇所です
あとは、バックステップがついているので、乗り味的にはヒルクライマーよりロードっぽいのかもしれません

見る角度により、その表情を変えるバイクが好きです
一貫して同じ顔のバイクは飽きやすいです
マッチョな一面と、オフな顔、ラフな顔、線の細い顔、そこまで計算で作り上げることは本当に難しいです

スイッチをフレーム右側に移設し、ヘッドライトも下部に移しました
ハンドル周りにあるのは、操作する上での必要最小限のもののみです

タンクはハーレー用のスポーツスタータンクです
このタンクのおかげで、このバイクも活きました
よく「このバイクの注目点はどこですか?」と取材などで聞かれます
いつも困ります
一つ一つのパーツがお互いを活かし合ってフルカスタム車として完成します
でも「全部です」と言うのも偉そうな気がして、そういう質問にはいつも困ってしまうのです

FCRキャブが見え隠れします
こないだ調べてみると、9万円ほどもするじゃないですか!!
さすがに貫禄があります

サイドマウントのテール&ナンバーステーです
これにより、リアフェンダーの邪魔者がいなくなり、シュッとしたイメージを作り出しています
こいつの効果は思うよりも大きいです

赤いのがスイッチ類です
前からホーン、ヘッドライト、ウインカーのスイッチです
使いこなすには、多少の慣れが必要ですが、それが僕は好きです
「誰でも乗りこなせるバイク」より、「俺にしか乗りこなせれないバイク」のほうがかっこ良く感じるのです
現にライトのほとんどのお客さんは僕でも心配することを2週間もすればけろっと「慣れた」と笑っています
下に見える青いのはヘッドライトです
ちと暗いですが、このバイクにはこれしか考えられません

このバイク
少しの間 僕の足として活躍しました
通勤にツーリングにと、加速のドッカン具合がたまらなく好きでした

SRX600は 僕の中での4スト単気筒ランキング 3位に位置します

また、自分用にでもカスタムしたいバイクですよ

カスタムバーニング誌さん 掲載ありがとうございます