僕は高校生当時、遊びバンドでドラムを叩いておりまして、今回依頼をくれたのは当時ボーカルをしていた同級生です

その彼、今は車屋さんと、ハーレーを扱うショップをしておりますが、ハーレー部門 忙しすぎてこの在庫車を3年放置のまま

ということで、前置きが長くなりましたが、今回はFXRのレストア依頼です

これを書いている時点で ハーレーのエンジンなんか、やったことありません
昔 ハーレー屋さんにいた時も、加工や事務をやらされておりまして、整備はまったくしておりません

彼に「外装だけな」と伝えるも、持ってきたこのFXR
なんともエンジンが汚い
「エンジンもばらして 綺麗にしてや」
らしいですよ
話が違う・・・

いまやSR専門ショップ化している当店
しかし、勉強してみますか

幸いなことに、お客さんとはいえ 気心知れた同級生ですからね

僕の勉強材料になってもらいます

勉強とはいえ、回りの環境に恵まれております

神戸には先輩のハーレーショップ
和歌山にはハーレーも扱う元従業員の汚いショップ
東京には超有名店で働く元従業員

聞けば快く教えてくれる人がわんさかおりますよ

特に東京の彼

今後、電話の嵐に合うことになります

しかし 汚い
仕入れたときもよほどボロだったんでしょーが
3年 放置期間に更に熟成されたんでしょう

当店に遊びに来る常連さんたち
一見ハーレーには見えておりません

「STEEDかと思ったわ」

らしいですよ

で、レストアなので加工なんてしません
とりあえずばらしにかかります
マフラーを外してみると、口でしかついておりませんでした
ステーがいるなと

こちら ラバーマウントなので、エンジンかミッションにステーをとる必要がございます

パイプに溶接しますか
ということで、ステーを切り出しますが、今まではコンターマシンを使用していたところ、先日プラズマカッターなる新機材を導入

いっぺんそれで切ってみますか

モケモケ

何でも久しぶりに使う道具はそれなりに練習が必要ですね

ということで2枚目
昔 使ったことがあるので、2枚目は綺麗にできました
はい 写真は撮り忘れ

それを曲げて 溶接して完成

レストアだけって聞いてたのに。

まーこれもレストアの一環ですかね

で、メインスイッチがぶらんぶらん

元は、タンクオンメーターにスイッチがついているんでしょーが、この車両 タンクがつるんとして何もありません

前のオーナーはキーシリンダーをプランプランして乗ってたんですかね

カスタム途中で嫌になったんですかね

というわけで、スイッチのステーを作っていきます

まずはコイル上部にプレートを作りまして

で、メインスイッチの前側がすっぽり入るカバーを製作

鍵をひねったときにクルクル回らないように、穴の一部に溶接で盛っておきます

それらをコイルを避けるようにアーチした丸棒でつなぐと完成

元からダイナコイルに変わってますが、これも目だっていいじゃないですか

プライマリーケースを外すときには、和歌山の彼が手伝ってくれましたが、なんとも頼りない
「俺 ショベルしかやらんから」

東京の彼に電話で聞くと全て的確に答えてくれます
さすが超有名ショップの従業員

あれやこれやと10回以上は電話しましたかね
見事シリンダーまで抜けました

SRなら外した部品を適当に箱に入れていきますが、今回は組むときにわけがわからなくなるように、分類してきっちりメモして
っちゅー感じでばらし作業がとっても遅いです

しかし、これが組むときに早く、確実に組める最短距離です

ラバーマウントってのは、もっとあちこちラバーで保持しているのかと思えば、3箇所だけなんですね

そして、ラバーだけではあかん
ということで、ピロボールが2箇所入ります

ばらしてみて初めてわかるその構造
やっぱりよー考えてますよ

これはスペーサーの位置やら 後でもわかるように記録的画像です

というわけで長いばらし作業が終わりました

分類して メモして 写真とって 前オーナーの改造箇所を手直しして

ここ3日ほどは実に激務でした

もっと単純な構造かと思えば、ばらしたパーツたち
SR2台分はありますかね

もーハーレーイヤ
SRがいい

たくさんのパーツたち

これから綺麗にしたるさかいな

ばっちいブレーキ
これもついでにオーバーホール

前ブレーキが固着ですか
キャリパー悪いかもな
と思っていたら、マスターもガビガビでした

オイルポンプをばらしてブラスト
東京の彼の言葉
「オイルポンプは特に気をつけてくださいね
 砂がエンジンを駆け巡ってえらい事になりますから」

おーコワ
これでもかってくらいに、砂が残っていないかエアブローとパーツクリーナーで清掃します

前の写真から数年 組まずにほったらかし・・・
するとこのバイクの持ち主から、
「ハーレー屋 やめるから買い取れ」
とのお電話

そーなん?
一変して在庫車となりまして
このハーレー君
残業時間で組んでいきますかい

ピストンはやっぱりね 汚いもんで

ウェットブラストでこうなりました
僕の経験では、WPCよりもこっちの方が良い感じになってます
エンジン屋ではないので そう何十台も比べていませんが、ウェットブラストピストンは今のところトラブルがないです

残業時間なのでお勤めに行っている彼もお手伝いしてくれています

バルブは国産でもいつもやってる、磨き倒して光らせておきます
これでカーボンはつきにくくなるんでしょう
両サイドが加工前 真ん中の二本が加工後

で、ガイドとのガタをチェックして 問題がなければ組んでいきますが
バルブステムシールの抜け止めのかえしがありません
超有名ショップのチーフに聞くとね
「抜けることもあるで 液体塗って組むねん」
らしいです
なんやねんな ハーレー・・・

ヘッドが完成しました
バルブのすり合わせをするために タコ棒を紛失
見つかるまでに30分をロスして 深夜になりました

いつものようにフィン部分を削って、それも結構時間がかかったんですが
ヘッド組むだけで、2時間はかかりました(タコ棒捜索時間含む)

シリンダーの塗装 フィン削りも終わりました

元ついていたピストンリング
外周部分が膨らんでいます
そんな仕様なん?
じゃーなくってね、内側が削れてしまってるってことですよ
こんなことになるんですねー 
国産ではこんなリング 見たことがありません

で、新品リング
有名ショップのチーフに聞きますと 合口の隙間 0.2以上です って
以下じゃなくて以上ってとこがデビッドソン

シリンダーの減りは、ダイヤルゲージを当てなくても
リングの当たる面と当たらない面 指で触って段差がなければOKです って
さすがこちらもデビッドソン

ここまでの作業は大慌てですので写真がございません
国産でもよくありますが、シリンダーとヘッド 一緒くたにスタッドで止めてまうってやつです
っちゅー事はね、ベースガスケットに液体ガスケットを縫って、乾く前にヘッドまで載せないとダメってなわけですが
シリンダー なかなか入りません
トップ セカンドは簡単に入りますが オイルリングが一番てこずるなんて 初めての経験です

今後の事もありますし
リングコンプレッサー 仕入れますかね

で、チーフ様が言うには カムシャフトの奥のニードルベアリング
これが割れてエンジン内のあっちゃこっちゃで暴れ倒してエライことになると。
安いもんですから ここは交換

このベアリングを入れる穴
これ以上奥に行かないように返しが付いておりますが あんまり叩きすぎると簡単に割れるそうです
おーこわ

そんな感じで夜中 東京の彼に電話の嵐です
ありがとうございますね

で、東京の彼に聞きまくって プッシュロッドカバー 取り付けまして ハーレーらしくなってきました
カムのスラストやら 油圧バルブの油圧抜きやら デビッド君
なかなか コツのいる作業の連続です

夜な夜な 残業の作業が続きますが これだけは一人では無理だ!!
というわけでお手伝いさんを呼んで 見事フレームにエンジンが載りました

で、ラバーマウントの前側はエンジンの下
あとの二点は ミッションとスイングアームに通るシャフトに取りつきますが
そのサイドのラバー受け 一個しかないやん!!
何年も前にばらしたこのFXR
部品の管理も もうワケワカメ!!
ヤフオクにもありません
V−TWIN 純正 欠品・・・
作る?
というわけで 幸い?にも右側があるので それと左右対称なもん 作ります
まずはベースプレート

穴を開けて 次は このややこしい段の付いたパイプを作ってまいります

旋盤でガリガリ君
正確に段の位置を出して 正確に同じ位置に溶接できるように、こんな感じで位置決めします

っチューわけで、ここまで出来ました
でね この時点で知りました
このFXR
前後ホイールが21 16 とノーマルではないようです
そもそも キャストホイールだとか
で、スイングアーム ネス製らしいです
なんだか 結構 改造してたんですねー

お客さんにはSTEEDに見られてたのに・・・

ここまでくれば ラバーマウントゆえの作業 二個のピロボールを調整します
調整方法は車体を真っすぐにして、リアホイールが 縦にも横にも真っすぐなるように
らしいんですが、ある程度の位置から全く動きません
もしやと思い、サスのマウントを緩めて真っすぐに合わすと サスとフレームの間にこんなにも隙間ができます
この間に フェンダーストラットも入るようですが さすがデビッドソン
そしてネス様
まあ おいおい合わせていくとして

インナープライマリーを付けました
ただ、ボルトの位置が微妙に合いません
もしかして・・・
と、エンジンとミッションの連結を緩めてこちらを先に本締め
見事付きました
東京の彼に聞くと 「ショベルならそれしないと インナー 割れる事もあるんで」らしいですよ

よかった
早くに気が付いて・・・

セルモーターはバッチかったので、ばらして スチール部分は塗装 アルミ部分はウェットブラスト
綺麗になりました